県内有数の温泉地に居を構えていたのだが、「車がないと不便な土地なので」と、生活しやすい鹿児島市吉野町への引っ越しをいつからか考えるようになったのだそう。そんな折り、「偶然見かけた平屋建ての家が、とても上品な佇まいだったんです」と、一目見てこんな家に住みたいと思ったのだそう。その家を手がけた「住まいの前屋敷」に相談したことから、新しい家を作る計画が動き出していく。もともと実家があった敷地を一人住まいにちょうど良い広さを残して整理し、そこに暮らしやすい平屋建ての家を建てることに。
室内は動きやすさを最優先にしたバリアフリー。玄関の上り口にも段差はなく、リビングを中心にしてシンプルにまとまった最小限の生活スペースは、それぞれの空間にゆったりとした広さを確保した。キッチンや水回りが寝室に隣接しているため、目覚めたときの動きもスムーズだ。
キッチンの吊り戸棚やリビングの飾り棚は馴染みの建具屋に依頼して作ってもらった。広縁の隅に置かれたアンティーク調の階段箪笥は、真新しい住まいに深みのある落ち着きを演出。リビングの飾り棚に置かれたお皿や壺などの置物は、今までに少しずつ集めたお気に入りのものだ。以前の家では京風の庭に紅葉やリュウノヒゲを植え、四季折々の表情を眺めながら暮らしていたKさんだが、「草むしりが大変だから」と、新しい家で草木の茂った庭をつくる予定はないという。その代わり、玉砂利や竹垣で和の趣きを楽しむつもりだ。
社交的で、親しい友人を招いてのホームパーティーを主催する機会も多いKさん。新居には、ゲストのための個室を用意した。「年を重ねていくからこそ、毎日の楽しみを増やしていかなくちゃ」と、この家に似合う家具を選んだり、日々使いの食器をまた少しずつ買い足したり、好きなものを暮らしに取り入れていくときの「ワクワクする気持ちがとても大事」と笑う。
シンプルな間取りや動線の良さで日々の暮らしやすさを追求したK邸では、システムキッチンが使いやすく、手入れも簡単にできる。脱衣所に設置されたスロップシンク(深い洗面シンク)もしかり。
それまで暮らしていた家は寒さの厳しい土地に建っていたため、念願の「暖かい家」の完成に、どの部屋も温度差がなく「家の中が全部暖かいの」と満足そうなKさん。高気密・高断熱に絶対の自信を持つ「FPの家」のFP軸組工法は、ウレタンフォームを注入発泡して30tの圧力をかけて木枠と一体成型した硬質ウレタン断熱パネルを家の構造体に組み込む独自の工法。パネルと柱・梁との接合部の隙間や、窓などの開口部も気密テープによってしっかり密閉。ていねいな施工で徹底した気密対策を図っているから家全体の温度差が小さく、一年を通じて快適に暮らすことができるのだ。そして寒い日も暑い日も一台のエアコンで十分だそう。その他パネル内部には筋かいを付け、外部の力から守る構造材でもある。
【住まいの前屋敷/鹿児島】