家づくりを前に住宅展示場やモデルハウスを数々回ったというYさんご夫婦。もともと奥様がアレルギーを持っていたこともあり、家づくりのポイントは「自然素材」に絞られていった。「楽しい家」を選んだ大きな決め手となったのは、住む人に優しい漆喰と無垢材。無垢材については奥様も色々と勉強されたそうで、「楽しい家で使っているのは、化学物質とは一切無縁の本当の無垢材でした。子どもにも安心安全で、触っていても気持ちいい。特に浮づくりの心地良さが気に入りました」と評価する。奥様が惹かれた浮づくりとは、木の表面を丁寧にこすり年輪を浮き立たせたもの。感触のいいその板がY邸では床一面に広がり、いつでも優しい温もりを感じていられる。
「気持ちが良くて、冬は温かい。新居で暮らし始めてから、家に帰りたいとすごく思うようになりました」と満足そうに語る奥様。その話しぶりからは、我が家への深い愛着が静かに伝わってくる。
Y邸の特徴の一つは回遊できる間取り。玄関からLDKへ入り、通路を通じて書斎を抜ければまた玄関へと出ることができる。行き止まりがなくどのスペースへも2方向からアクセスできるため、混雑を防いだり、動線がショートカットできるというメリットがある。また、夫婦共働きということもあり家事が効率良くこなせる工夫にもこだわった。キッチンと脱衣・洗濯スペース、そして浴室が直線状に並び動線も短いので、食事の支度をしながら洗濯機を回したり、水回りの掃除をしたりといった家事が、無駄な動きを省いて進められる。
また、食器棚や収納棚を造り付けにしたのも家事効率化のため。「既製品を置いてしまうと棚と壁の隙間にホコリが溜まって掃除もしにくい。できる限り掃除の手間を省きたかった」と奥様。造作の棚は言うなればオーダーメイドなので、住まい全体の雰囲気を損なわず、高いところまで無駄なく収納に行かせる点も魅力だ。
土地に対して斜めに建て、南向きの住まいを叶えたY邸。おかげで特別大きな窓を設けなくとも陽光を豊かに取り込むことができ、気密性を高めながらも充分に明るい住まいとなった。斜めに建てたことで隣家と窓の位置がずれて視線が合いにくく、2階から外を望むと住宅街の屋根を縫うように視界が開けている。
空気清浄機のような働きをすると言われる「幻の漆喰」が使われた住まいは、「焼き肉をしようが漬物を漬けようが、本当に匂いが残らない」と奥様。また、陽当たりの良さに木の調湿作用も加わってか、2階の通路に室内干しする洗濯物は一晩で乾くそう。やわらかい無垢材はメンテナンスが気になるところだが、「多少の傷なら水を垂らしておけば一晩で元通りになります」と、1年暮らして扱い方も慣れてきた様子。
玄関近くの壁にはお子さんの手形を残してあるY邸。お気に入りの我が家に、これからもたくさんの思い出が刻まれていくことだろう。
【楽しい家/鹿児島】