ご夫婦の暮らす2、3階とお母様が暮らす1階は階段とエレベーターで繋がり、玄関も共有しているが、キッチン、トイレ、寝室は別なので、お母様はプライバシーを守りながら2階に住むご夫婦や介護サービスのサポートを受けることができる。また、陽当たりの良いウッドデッキを設けると同時に、防犯上の安心感を高めるゲートも設置。無垢材のぬくもりと庭のグリーンが穏やかな暮らしを演出してくれる。
木造3階建ての場合、2階建てと比べると建物の重量が重くなり、それを支える構造躯体や地盤はより強固にしなければならない。また、建物自体が高くなるため揺れやすくもなる。しかし、K邸ではご主人の趣味である天体観測を楽しむためのバルコニーを3階に設けた。拡大率の大きな望遠鏡では、少しの揺れでも狙いの天体をうまく捉えることができない。「揺れないバルコニーにするため土台部分もかなりしっかりと工事していただきました」とご主人。これから星空を眺めるのも楽しみだ。
3階建ての堂々とした高さを白い壁と木製の玄関ドアでかわいらしくコーディネートしたK邸。中へ入ると木の清々しい香りが出迎えてくれる。お子さんたちもそれぞれ独立したKさんご夫婦がこれからの暮らしを考えたとき、気になったのはお母様のことだったという。「転勤でしばらく自宅に住んでいなかったんですが、親と一緒に暮らしたくて」と、建て替えを決心。お母様も安心して暮らせる二世帯住宅を新築することになったのだそう。
高齢の親世帯と暮らす住まいを考えるとき重視したいのは、お互いできるだけ長く健康に過ごせ、いつまでも安心して住み続けられる環境。そして、生活のペースが違う二世帯が心地よく過ごせる距離感も大切だ。K邸では、段差を少なくしたり3階建ての各フロアへの移動を楽にするホームエレベーターを採用したりして動きやすさを確保。お母様のうれしいことや不安な気持ちを家族として共有しつつ、干渉しすぎないような適度な距離を保つ造りを心がけた。
楽しい家との出会いは娘さんの友人からの紹介だ。木をふんだんに使った空気感が決め手になったそうだが、「私たちの要望に一生懸命対応していただいたことで信頼感が増しました」と奥様。実は今回、4軒目の家づくりというお二人は「4軒目にして初めて自分たちの家という実感がもてました」と声をそろえる。希望したのは、お子さんたち家族が遊びに来たくなるような住まい。そのため、2階はパブリックスペースとしてキッチン、ダイニング、リビングそれぞれに、大人数が集まっても窮屈さを感じさせない余裕の広さに。さらにゲストルームとしても使える和室がつながり、各スペースが家の中心にある階段とエレベーターをぐるりと囲む回遊性のある配置になっているので、動線もスムーズだ。キッチン周りは、ワイドなワークトップのアイランド型に壁付けのキッチンカウンターを組み合わせて作業効率をアップ。キッチン横には、奥様がちょっとした家事を行うワークスペースも作られている。
【楽しい家/鹿児島】