「最初は収納たっぷりの家を望んでいたのですが、打ち合わせをしながら考え方が変わっていきました」と語る奥様は3人の男の子の子育て真っ最中。雑誌の広告で見た、木をふんだんに使った住まいに興味を持ってモデルハウスを訪れたのが、同社との出会いだったそう。柱や梁を表面に露出させた真壁づくりのノスタルジックな雰囲気に惹かれたのがきっかけだったが、そこで気づいたのが、暮らしやすさを感じる「暮らし方」を実践するための家づくりだ。
生活感を隠すための収納場所を多くしていくと、その分生活空間が削られていく。そこで、今回の家づくりにあたっては、物を持ちすぎないことと同時に物を置くためのスペースをどんどん省いていくことで、家族が広々と暮らせる住まいをイメージしていったという。「寝室や子ども部屋に造り付けのクローゼットがないので、今は2階の小部屋を納戸として使っています。子どもが個室を必要としたら、この部屋を利用する予定です」。
無駄のない造りで暮らしやすさを追求したS邸では、キッチンは対面ではなく壁付けタイプを採用している。壁付けキッチンのメリットとして、空間が区切られることがなくスペースを広く使えるということが挙げられるが、S邸では食器棚を置かなくて済むように、キッチン上部の吊り戸棚に食器類を収納して空間をさらに有効利用。また、壁付けキッチンでは背後にダイニングテーブルを置くことで配膳もしやすくなる。ここでは、キッチンとダイニングの間に腰壁を設置して、リビングからキッチンが丸見えにならないような工夫も施されている。
また、キッチン横に洗面脱衣室があり、そのまま室内干し兼収納部屋へとアクセスできる間取りで、洗って干して収納するまでの洗濯にかかる作業を効率化。「室内干しでも乾きが早く、干しっぱなしでも気にならないので家事がとてもラクになりました」と奥様にも好評だ。この収納部屋は、玄関からもつながっている回遊性のある配置で、帰宅時の動線もスムーズ。
S邸の構造材や床材、天井などに使われているのはヒノキの無垢材だ。爽やかな香りとリラックス効果で人気のヒノキをたっぷり使いながらコストパフォーマンスにも優れた『檜づくしの家』は、間取りやテイストを選びながら理想の我が家をコーディネートしていくセミオーダー型住宅。しかし、その組み合わせの選択肢は多岐に渡り、それぞれの家族にぴったりの形を作り出すことができる。
「この家に似合う家具を選んでいくのも楽しかったです」と奥様が言うように、木のぬくもりを感じさせるレトロ調のS邸には、落ち着いた色調のテーブルや棚、アンティーク感のある椅子などが溶け込むように置かれている。長く暮らすことを考え、ライフスタイルの変化にも対応できるよう造り付けの棚やカウンターもあえて用意しなかったことで、季節や気分に応じて模様替えをする楽しみもできたそう。年月とともに味わいが深まる木の家とともに、これからの家族の暮らしも深まっていきそうだ。
【サイエンスホーム(小山工建)/鹿児島】