のどかな田畑の風景が広がり、ゆったりとした時間が流れる。そんな場所に建つI邸。もともとは竹や雑木が茂っていた土地だったが、ロケーションとご主人の実家にも近い理由から、「家を建てるならここ」と決めた。ご夫婦ともに、木の持ち味を実感できる家を希望していたこともあり、そうした家づくりを得意とするビルダーを厳選。幣誌では「イメージが合う」と、尾堂産業の『木楽な家』に白羽の矢が当たったのだ。
その後、同社のモデルハウスや実際に住んでいる家も見学。なかでもインスピレーションを受けたのが、2階リビングから東シナ海を望む『海の家』。「室内にいても、目の前の景色の中にいるような感覚がステキでした。わが家にもそんなリビングがあったら…」。I邸のリビングに足を踏み入れると、広々としたワンフロアの大空間が出迎えてくれる。次に視線は自然と右手の大きな窓へ。木製の窓枠が切り取っていたのは、日々違う表情を見せる静かな里山だった。
「子どもたちが走り回れる広さが欲しくて」と話す通り、リビングダイニングは実に開放的。リビングと隣接する和室もあり、引き戸を開ければさらに伸びやかな空間に。ダイニングは小上がりの畳敷き。キッチンに立つ奥様とも目線が合い、動線も確保しているので互いの行き来もラク。キッチンは調理器具や食器のサイズや使う場所に合わせて、キャビネットを造作。これまで暮らした家での、使いやすいところ、使いにくいところを考慮して全体のプランを構成したそう。
もちろん、同社が提案する『家事楽』の要素も。キッチン裏に衣類収納もできる洗面・脱衣室を設けたり、寝室を兼ねた和室と玄関ホールの間にウォークスルーのクローゼットを配置したり。また、I邸には、構造から仕上げまでご主人の実家の山で育てた地杉が使われている。室内も外壁も、年月を経て少しずつ変化する様子も楽しみの一つ。ご夫婦がどんな暮らしをしたいかが表現されている、『山の家』の完成だ。
【尾堂産業/鹿児島】