H邸は建坪約35坪。決してゆとりがあるとは言えない敷地に、3台の駐車スペースを確保し、十分な居住空間を造り出すプランニングと施工の技術は見事と言うしかない。とくに家族が集まる1階は、リビングを南側に寄せ、大きな吹き抜けを設けることで、明るさや縦への広がりを演出。ハイサイドライトから射し込む自然光とあいまって、実際の広さ以上の開放感を味わえる。とても建坪35坪とは信じられない。
LDKには間仕切りを設けず、照明もダウンライトを用いて空間全体が醸すスッキリ感をアップ。ダイニングの一角には、家事や勉強ができるワークスペースを造作。みんながいる場所で作業ができるので、家族のコミュニケーションを取りやすくする仕掛けとしても活躍しそう。
2階は個室を配置。吹き抜けに面した部屋は、採光を補うためにトップライトを付けた。積み重ねた経験とセンスを持ち、住宅密集地ならではの創意工夫に長けているのも同社の魅力のひとつだ。
住み手の心地よさに配慮した高性能住宅を次々と提案している白木建設。今回の住宅で取り組んだのは、新たな省エネ基準をクリアする『ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)』だ。ZEHとは、1年間のエネルギー消費量が正味(ネット)でゼロになる住宅のこと。消費するエネルギー量が、太陽光発電などで生み出したエネルギー量で差し引きゼロか、それ以下にするという基準値を満たした住宅がZEHと定義される。住宅は2020年までに標準的な新築住宅で2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すとする政策目標が設定されているが、同社は鹿児島県内でもいち早い対応を行った。
しかも独自設定した外皮性能UA値0・56は、鹿児島エリア7地域基準値の0・6以下となる厳しいもの。セルロースファイバー断熱をはじめ、熱が逃げやすい窓やドアといった開口部には性能のいいものを標準装備するなど、細部にまでこだわりが詰め込まれている。そうして完成したH邸はUA値0.52。光熱費といったランニングコスト軽減を叶える折り紙つきの住宅と言える。
【白木建設/鹿児島】