限られた予算で思いどおりの家づくり。きっと誰もが考えることだが、どこかに妥協やあきらめが出てしまうもの。Hさん夫妻も「ハウスメーカーへ相談に行っても、予算を伝えると急に相手にされなくなって」と、理想と現実のギャップに悩まされていた。建てたいのは、自然素材を用いた家。しかもエアコンなどの冷暖房機器が苦手な奥様のために、空調を使わず、自然エネルギーを利用して気持ちよく暮らしたい。
そんなときに雑誌で『自然木(じねんもく)』の記事を読み、同社がパッシブデザインに注力していることを知る。「ここだ、と思いました」とはご主人。ダメもとで相談へ行くと、候補に挙げていた土地をじっくりと調査。少々難しい土地だったそうだが、角地で陽当たりも上々。「日照や風向きなどから、家の向きや間取りまで細かな提案をしてもらいました。丁寧な対応はもちろん、担当の村田さんの、いい仕事がしたい、という情熱が伝わってきておまかせしようと決めたんです」。
『自然木(じねんもく)』施工のH邸の大きなテーマは、1階だけで生活できる間取り。「老後を見据えた造りにしたいと思い、主寝室を中心に回遊性のある動線を実現。朝起きて出勤して帰宅まで、をスムーズに動けるレイアウトです」。特徴的なのは主寝室→ウォークインクローゼット→トイレ→洗面・脱衣室の流れ。トイレを動線の一部に取り込むことで、使い勝手をグンと高めた。
LDKは南面に広いスペースを確保。リビングから書斎コーナーに至るまで、窓辺にはコンクリート下地の蓄熱タイルを設けている。冬は部屋の奥まで届く太陽光だが、夏になると庇と日よけで確実にカット。これまで以上に断熱性能を上げながらも、ルーバー雨戸や葦簀(よしず)、外付けシェードといった日よけ設備を設け、遮熱を徹底している。ひと冬を過ごして「以前、暮らしていたマンションと比べ、とても暖かいです。しかも、結露がなくて・・」と驚いた様子のご主人。サッシのグレードと無垢木材の使用量で調湿性能を確保し、快適な住空間を叶えている。
【建築工房 自然木(じねんもく)/鹿児島】