外壁のグレーがかった表情のある塗り壁が、さりげなく個性を放っているT邸。外観のアクセントにもなっている4つの天窓によって一見2階建てのように見えるが、実は天井の高い平屋で、中に入ると吹き抜けのような開放感が心地いい。同時に床や壁などにふんだんに使われた杉や漆喰といった自然素材の温もりに、優しく包まれる住まい。思わず長居したくなるような、癒しの空間が広がっている。
以前の住まいは昔ながらの田の字型の間取りだったというTさんご家族。空間が小さく区切られていたため人を招くにも狭苦しかったそうで、新居は気持ちよく人を招けるものを目指した。LDKと和室を繋げることができる広々空間には、天窓から注ぎ込む陽光が優しく満ちている。希望を叶えた新しい住まいには、ご夫婦の友人やお子さんたちの友達が集まる機会も増え、人とのつながりを育む我が家となった。
中学生と小学生のお子さんがいるTさん。子どもたちが成長するに連れて増えてきた道具類を、スマートに片づけるための収納にもこだわった。なかでも心強いのは秘密基地のような小屋裏収納。屋外用のテントや思い出の品など、普段は使わないけれど必要なものや大切に残しておきたいものがたっぷり収納できる。キッチン収納も注目すべき箇所で、レンジ等の家電製品やゴミ箱などもきれいに収まるよう、Tさんの希望に合わせて造り付けたオーダーメイド。半透明の引戸も付いており、使わないときは閉じて生活感を隠せるのもポイントだ。テレビ横やリビング入口の隙間など、ちょっとしたスペースに設けた棚も便利に活躍。収納スペースの多くに可動棚を取り入れているため、ものに合わせて高さを調節でき、収納内までも整頓しやすいのは嬉しい。
スッキリ片付いた空間にはおしゃれな壁掛け時計やソファ、お子さんの書道作品など魅せたいものが映え、柱や梁さえも意匠として際立って見える。
新居に暮らして約1年。四季をひと巡り経験し「広々としているのに全体的にあたたかくて、夏は天窓を開けるだけで風が通って涼しい。梅雨時でもサラサラした感じが気持ち良くて本当に快適です」とTさんご夫婦。1年経った今でも、初めて訪れる人には「木の匂いがするね」と言われるそう。オール電化に変えたことや自然素材の効果、断熱性能の高さによって、以前の住まいより光熱費が大幅に削減できているというのも嬉しいポイントだ。
リビングの壁に家族の手形を残したり、塀を塗装したりと自らも手を掛けた家づくり。上棟式の日にはご両親や近所の人の加勢ももらいながら紅白餅を準備し、集まってくれた知人や近所の人など100人近くにふるまって、将来まで無事な家であることを盛大に願った。その晩は造りかけの我が家に夫婦で宿泊するなど、すでに様々な思い出が刻まれているT邸。これからも、たくさんの記憶が、住まいの温もりとともに刻まれていくことだろう。
【楽しい家/鹿児島】