ご夫婦ともに興味を持っていたのがパッシブデザイン。これは自然の光や風をうまく活用し、小さなエネルギーで豊かに暮らす住宅のこと。ポイントは、配置・断面計画、内装の自然素材による仕上げと断熱性能。
O邸の室内壁に採用された杉板とシラス素材の塗り壁は、両方とも湿調作用を持つ。シラス壁は消臭機能もあって耐久性にも優れている。自然素材ならではの温もりある質感とともに、清々しい空気に満たされた住空間を実現している。
住宅の向きは、敷地に対して建物が少し斜めになっている。これは効果的に熱・光を取り入れるためと、道路からの視線を逃すため。さらに夏に吹く北西の風を効率的に寝室に取り入れて、就寝中も涼しく過ごせるよう配慮されている。リビングの勾配天井が暑い空気を上方へ誘導し、北側から排出。断熱材は、セルロースファイバー、遮音性能にも優れている。さらに冬は薪ストーブの炎が暖と癒しを提供してくれる。
平面計画で「最初に決まったのは、キッチンとダイニングの配置。対面だと回り込まないといけないから、短く横移動でもOKのこのポジションがよかったんです」。しかもキッチンは両サイドへ抜けられるので、ご主人が手伝う時も動きやすい。さらに洗濯動線にもこだわりが。洗面・脱衣室には衣類のクロークが隣接。クロークからは、中2階の下を使った収納に出入りできる。この収納へは階段側からもアプローチ可能だ。 1階には和室も設けてある。「将来、階段が辛くなったら1階だけで生活するつもりです」と奥様。こうした加齢配慮は玄関にも。低い位置に式台を設けて、上り下りしやすいようにした。
また、リビング・和室から庭へのつながりを考慮して、ウッドデッキと庭のレベル差を抑えてある。庭には家庭菜園もあって、家事コーナーからのアプローチも段差が小さく楽に出来る。
【建築工房 自然木(じねんもく)/鹿児島】