「木のいい匂いがする」。暮らし始めて約半年、毎日ここで暮らす当人たちは、今ではあまり気づかないと言うが、時折訪れる人はそんな風に言ってくれるという。床の美しい木肌と手塗りの表情が素敵な漆喰の壁。I邸は、自然素材の温もりと作り手の真心が優しく漂う住まいだ。
正匠は、地元での評判が良く友人も建てていたことから、Iさんご夫婦にとっては当初から信頼のおける存在だった。実際の家を見てみようと見学会に足を運んで感じたのは、まず暮らしがイメージしやすいということ。そして「和風も洋風もあって、それぞれのニーズに合わせて造っているんだろうなと思った」とご夫婦は振り返る。I邸も、住み手の個性がさりげなくちりばめられた家。奥様が買い付けたお気に入りのタイルや、シンプルでおしゃれな建具の窓デザインなど細部まで見どころがいっぱいだ。本好きなご主人のために充実させた本棚も、隠す収納と見せる収納が好バランス。すっきりと片付きながらも、住まい手の「らしさ」を感じられる住まいになっている。
本棚だけでなく、衣類や食品の収納も使い勝手良く充実。特にパントリーは広く、キッチンの奥に個室くらいのスペースがある。壁のクロスが一面だけグリーングレーになっていて、白壁とのコントラストが北欧を思わせる空間だ。「すっきりとした住まいに憧れていました。ものの居場所を決められる空間があると、片づけがとても楽ですね」と奥様。住まいを一周できる回遊動線も特徴で、「全部が繋がっているから掃除がしやすい」と話す。効率よくものが片付き、気持ちよく暮らすためのヒントがここには詰まっている。
そんなI邸は、書斎を個室にするのではなく、LDKの一角に設けているのもちょっとしたこだわりだ。それは「何を話すわけではなくても、同じ空間にいることを大事にしたい」との想いから生まれたもの。互いの気配を感じながら過ごす日常。そんな何気ない時間の積み重ねが、家族の絆を深く育んでいくに違いない。
【正匠/鹿児島】