心地よく風の吹き抜ける見晴らしのいい高台。この地に、青空に白壁が爽やかに映えるT邸がある。もともとここは、ご主人のおじい様が植えた杉の木の生い茂る山だった。周囲への陽当たりを良くするために木々を伐採していたご主人。「どうせならこれを生かせないか」と考えて思い浮かんだのが、自前の木を生かした家づくりに取り組む「住まいず」だ。
当初は山の木を使い国道沿いの土地に家を建てようと考えていたTさん。しかし、同社に山を見てもらった際、「国道沿いより、むしろこの山に建ててはどうか」と提案された。「それは願ってもないこと」と即決したご主人。一般的な宅地に比べ、整地や手続きは簡単なものではなかったが、「住まいずさんは、その大変さも承知のうえで提案し、力を尽くしてくれました。家に使う木材も、自前の木よりすでに製材されたものを使った方が早く進んで楽だったはず。それでも『山の木には、植えた人の想いがある』と。本当にこちらの立場に立って考えて下さっているのを感じましたね」と振り返る。
それまでぜんそくに悩まされていたご家族。家の素材、特に漆喰にはこだわりがあり、希望の種類があった。それは住まいずで取り扱っているものではなかったが、同社はご夫婦の希望を汲みその道のエキスパートを紹介。専門家から直接アドバイスを受け、納得のいく素材を取り入れることができた。「必要とあれば社内に留まらず、各分野の志ある人たちと繋がり合い、住み手が満足できる家を建てる。そんな風通しの良さを感じました」とご主人。こだわりを叶えた新居では、それまで入院に至るほどひどかったというお子さんのぜんそくの症状も改善。「以前とは全然違う。入院することもなくなり、本当に助かっています」と奥様の表情も晴れやかだ。 リビングにはT家を代々見守ってきたクロガネモチの木で造ったテーブルも置かれ、素材の優しさと家族の想いが穏やかに満ちるT邸。伸び伸びと過ごす家族の姿に、近くの墓で眠るおじい様も、きっと目を細めているに違いない。
【木づくり建築工房 住まいず/鹿児島】