家の中心に位置するリビングダイニングは、南から北側の窓に吹き抜ける風が心地よく、ダイニングから見える家の北側にある庭の緑がホッと寛ぎの時間を提供してくれる。「ここは、お気に入りの場所です」と笑顔で語る奥様。窓の外へと続くウッドデッキは、部屋を実際より広く感じさせる効果も。大きく伸びた軒は、南国の強い陽差しから住まう人を守るかのようだ。
自然素材でつくられた室内は、クラッシック音楽を聴かせて熟成乾燥させた「音響熟成木材」を使用。調湿効果や防カビ・防菌作用もあり、柱や床など優しい色と柔らかな感触は五感に響く心地よさ。また、家全体に手塗りで仕上げられた「幻の漆喰」は、気になる匂いやほこりも吸着分解し、こちらも調湿作用があるので、育ち盛りのお子さんの汗やニオイ、アレルギーに配慮された空間になっている。思わず深呼吸したくなるような、穏やかな安らぐ雰囲気にも納得だ。この健康にいい家に住むことで、3人のお子さんは自ずと木や素材に興味を持ち、環境問題を考えるいいきっかけになったそうだ。
玄関の間口は4mの幅でなだらかなスロープ。一歩中へ入ると、左側は収納庫へ続く扉、少し手前には天井まである造り付けのシューズクローゼットになっている。その奥に洗面台や家事スペースがあり、反対側はキッチンやリビングへと続く。全ての部屋を回遊できる動線になっていて随所に収納スペースを完備。一切の無駄のない工夫された機能的なつくりは、同社の心遣いを感じる。音響熟成木材で造作されたキッチンや洗面台・棚などは職人の腕が光るオーダーメイド。オリジナルの家具で見応えも十分だ。杉のエキスと油分をたっぷり含んでいるので、水をはじき、ちょっとしたキズなども復元してしまう、まさに生きている素材なのだ。すべてが同じトーンでつくられているので扉や引き戸もまるで芸術品のようだ。
一番驚いたのはバスルーム。湿気の多い場所にはカビや汚れが気になるので、通常木材が使用されることはほとんどない。しかし天井や壁にこの音響熟成木材が使用されており、まさに常識破りの木材といっていいかもしれない。引っ越して5ヶ月になる浴室の音響熟成木材は、掃除をしなくてもその美しさを保っていた。ご主人の一番の希望だった窓から外の景色を見ながら入るバスタイムは格別に違いない。
リビング横を奥に進むと小上がりになっている2帖のフリースペースがある。たくさんの本を収納する本棚もあり、遊びに来たお友達もついつい集まってしまう楽しい空間だ。そこを中心に3人のお子さんそれぞれの部屋に分かれ、長男と長女の部屋は仕切りを外すと一つの広い部屋になり、子どもたちが巣立ったあとのライフスタイルにも考慮。廊下は洗濯物が干せるように工夫され、かわいらしい人形が飾り付けられた階段を上がると約10帖の小屋裏部屋もあり、秘密基地や隠れ部屋のよう。こちらも遊びにきた子どもたちに人気の場所で、収納や趣味の部屋にしても楽しそうだ。
丸く大きなペンダントライトとダウンライトの印象的な和室は、光の調整や目隠しなど障子代わりになるプリーツスクリーンで明るさを演出。仏間横の吊り押し入れは、季節の飾り物を置くのもよし、モノを収納してもよしと便利なスペースだ。
「健康に安心な家は子どもたちが将来、社会人になって帰ってきてもホッとできる場所になると思い選びました」と嬉しそうな奥様。この家から家族の新しい物語が始まったようだ。
【旭住宅/鹿児島】