Sさんご夫婦の新居が建てられたのは、通勤や買い物にも便利な立地ながら、近くには川が流れる静かな住宅地。「近い将来、お互いの母親と同居することになるだろうと考えていたんです」と奥様。それなら一緒に暮らしやすい新しい家を建てようと夫婦で話し合い、「いずれ私たちが車を使わなくなっても困らないように」と、それまで住んでいた場所よりも利便性の良い土地を選んだという。二人にとって今回の家づくりは、年齢を重ねるに連れて起こり得る生活の変化も見据えた「暮らしやすい環境づくり」でもあった。
川の近くという立地のため、もしものときに備えてS邸の基礎部分は通常よりも高めになっている。そのため玄関には緩やかかなスロープを設け、裏は駐車場から小屋根で繋がる勝手口が作られた。雨の日でも濡れずに車まで行き来できる勝手口は、「犬の散歩の後に足を洗えるように」と横にタイルの洗い場も付けてもらったのだそう。
プランニングでは、それまで親しんだ暮らしを大きく変えることなく二世帯の生活が両立できる間取りを希望。そんなお二人の要望を受け、1階にLDKと廊下で繋がる個室を用意した。「まだ母との同居はしていないので、この部屋は友人や親戚の子どもたちが遊びに来たときに泊まれるゲストルームとして利用しています」と、竹炭入りの畳ベッドも作ってもらったのだそう。部屋のすぐ横には洗面スペースとトイレが配置されているため、ゲストも気兼ねなく使うことができそうだ。
リビングの横にはアクリル板で仕切られたプレイルームがある。ご主人の趣味の楽器を楽しむスペースになるはずだったのだが、気がつけばこちらも親戚の子どもたちのお気に入りの部屋になっているのだとか。当初は普通の壁の予定だったが、友人のアドバイスでアクリルにしたことで視線の広がりが生まれ、中の様子も一目でわかるので安心して子どもたちを遊ばせることができるのだそう。
「以前住んでいた家の近所に『楽しい家』さんの事務所があって、家を建てるならここで」と、迷うことなく決めていたというSさんご夫婦。同社が得意とする自然素材の質感を楽しむ空間づくりはS邸でも再現され、無垢材をたっぷり使用した天井や床、柱を露出させる真壁づくりの壁など、どこか懐かしい雰囲気に仕上がっている。「この家、暖房をつけていなくても暖かいんですよ。浮づくりの床がいいんでしょうか、冬場に裸足でいても冷たくないんです」と、奥様もこの家の木の温もりや漆喰など自然素材の効果を実感しているのだそう。
キッチン横の洗面スペース兼家事室には使いやすいカウンターや収納棚が造作され、その奥の脱衣室の床は汚れが目立たないようにと黒く塗装された無垢材を使用。「細かいところまで配慮していただいて、過ごしやすい住まいになりました」と二人。一緒に暮らしている愛犬のクルミちゃんも、毎日気持ち良さそうにお昼寝しているのだとか。
【楽しい家/鹿児島】