長年暮らした家を建て替え、大きく様変わりしたT邸は、居住スペースをあえてコンパクトにまとめ、生活動線の効率化を図った。「以前の住まいは増築や改築をするうちに広くなり過ぎてなんだかちぐはぐに。しかも暗かったり冬は寒かったりで…」とTさん。そんなお悩みを解消すべく、無駄を省き、本当に必要なものや広さを見つめ直し、小回りのきく平屋づくりに。自然光もたっぷり取り込み、明るくあたたかな空間を手に入れた。
家族が最も長い時間を過ごすリビングは、それぞれがくつろぐのに十分な広さを確保する一方、寝室は一人1部屋ではなく共有にし、カーテンで仕切ってルームシェアのような使い方にした。目の届く範囲で家族が行き交い、互いの存在を感じやすい。高齢のお母様も安心だ。広過ぎず狭過ぎず、多過ぎず少な過ぎない、必要なものを必要な分だけ備えたT邸は、きっといろんなものが『ちょうどいい』から住み心地がいいのだろう。
建て替えを機に荷物の整理をすることになったTさんご家族。「断捨離をしてみて本当に必要なものって限られていることに気づかされました」と当時を振り返る。新居には、そのふるいに残った『もの』をきちんと仕舞えるスペースを用意した。家族の衣類は廊下に設けたメインのクローゼットへ。ロールカーテンで目隠しし、出し入れも楽々。その右側には布団を収納できる納戸、左側には可動棚、裏手の浴室には下着類やタオルなどを収める大容量の棚…と、『もの』の居場所を区分けし、収納場所をひとまとめにすることで、片付けや動線がスムーズになった。食器棚や収納庫、カウンター下の棚など、キッチンの造作家具も緻密に計算されていて使いやすい。「ざっくりとした要望以外はほとんどお任せで下が、期待以上の素晴らしい提案で大満足の家になりました」とTさん。住まう人を想い、暮らしに寄り添った空間設計が実に見事だ。
【建築社/鹿児島】