鹿児島市内のとある住宅地。黒を基調にしたシンプルな佇まいのM邸は、玄関ドアを開けた瞬間からおしゃれな雰囲気が漂う。ヘリンボーン柄の床に、白壁にステンシルの装飾、そして暖かい色の照明が温もりを感じさせる空間。階段をのぼると、さらに想像できなかった景色が広がっていて、その自由度に圧倒されてしまう。広々としたLDKに、贅沢に張り出されたデッキ。屋外との一体感が心地よく、住宅密集地とは思えない開放感と緑の景色が楽しめる。子ども部屋も仕切らずLDKと一体。スペースごとに床の高さを変えているのもメリハリがあって面白い。
知人の紹介で知った正匠。ご夫婦は当初、「和風住宅を建てる会社」というイメージを同社に抱いていたが、話を聞くと希望に応じてどんなテイストもできるという。イメージするものをネットや本で見つけては担当者に提示し、一つひとつ思い描くものをかたちにしてもらった。大事にしたのは木の温もりと、アイアンが醸すインダストリアル感。細部までこだわりぬいたからこその洗練された雰囲気が、住まい全体に漂っている。
当初のプランは南向きだったというデッキ。陽当たりが良く明るいとされる方角だが、M家の場合、南側は住宅しか見えないというロケーションだった。どうせならと思い切り、視界の開けた北側に設けたのは、満足の住まいを叶えた大きな勝因だ。また、ご主人は調理師の免許を持っており、仕事柄、キッチンの設備にはかなりこだわっているが、キッチン前に造作された一枚板のカウンターも目を引く存在。ダイニングテーブルはあえておかず、普段の食事は皆このカウンターで済ませるというスマートな暮らしぶりも参考になる。
2階は子ども部屋も含めて空間の一体感や開放感を大事にしているが、子どもたちが成長してよりプライベートな時間を欲したときに個室が使えるよう、1階には書斎を確保した。また、子どもがサッカーから帰宅後すぐにシャワーを浴びられるよう、ガレージから浴室へ入りやすい動線が配慮されていたり、汚れたユニフォームや練習着を下洗いできる洗い場を勝手口のそばに設けていたりと、便利な工夫も随所に光っている。
【正匠/鹿児島】